SHISEIDO WINDOW GALLERY<金>の章 2018

期間 : 2018年8月23日-10月16日
場所 : SHISEIDO THE STORE

CREDITS
Art Direction : ミヤケマイ
Artist : 諸泉茂
Artist : 満田晴穂

Photo : 繁田諭

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作品解説(SHISEIDO THE TABLES)

ふたりの作家と紡ぐ「秋」と「金」の世界
日本の伝統的な美術や工芸、また歴史や哲学を取り入れながら、独自の視点で現代アート作品を発表しているミヤケマイさん。中央通りと花椿通りにそれぞれふたつずつ設けた「SHISEIDO THE STORE」のウィンドウディスプレーのアートディレクションを、「五行」をテーマに今年1月から手がけています。五行とは中国の古代哲学であり、日本の年中行事などにも深く根ざしている思想です。先人たちは「木・火・金・水」という4つの気を春夏秋冬に重ね、「土」を各季節の中間に置き、合わせて5つの気を五行として四季の巡りを促す要素としてきました。ミヤケさんは「過去に五行がテーマになった作品をつくったこともあり、 今までの私の作品のテーマでもある、ふたつの要素を対比させる“陰陽”という思想は、五行と一体なのです」と語っています。
1月のグランドオープンで春の「木」をテーマにご自身の作品から展示をスタートしたミヤケさん。2回目以降はミヤケさんが敬愛する国内外の才能豊かなアーティストや作家の方々に声をかけて、作品制作と展示構成のディレクションをしてきました。春にひと月「桜」の章を加え、夏の「火」、土用の「土」の章に続き、いよいよ8月24日から秋の「金」の章のディスプレーが始まりました。

涼しさ、暖かさという体感を視覚化するアート
「金」の章の作品を手がけたのは現代アートの諸泉茂さんと工芸作家の満田晴穂さん。ミヤケさんが作品に信頼を置く作家さんです。「実りや成熟を表す“金”のテーマにふさわしい、内省的で豊かな作風が魅力」とミヤケさんが期待した通り、秋らしい知性と落ち着きがビル全体を包んでいます。
中央通りに面した正面エントランス両脇のウィンドウの作品を手がけた諸泉さんは、ミヤケさんが三重県の複合温泉リゾート施設「アクアイグニス」でアートディレクターを務めた時に、作品を起用したご縁のあるアーティスト。夏の気配を感じるガラスの温度計を用いて、温度に反応する水銀柱の動きで、自然の変化を視覚化する作品を発表してきました。水銀という金属を五色に着色した温度計を、色ごとに並べ、温度で見せた五本の水平線。私たちが体感する季節の変わり目を、銀座の一瞬の風景として記憶に留めます。また、それぞれのウィンドウ内に設置した温度記録用装置が描く過ぎ去っていく日々の軌跡を、オートマチックドローイングに見立てています。

緻密な自在置物に聴く、微かな秋の声
花椿通りに面したふたつのウィンドウには、多くのコレクターを魅了する満田さんの自在置物の昆虫を配しました。右のトンボの世界から左のクツワムシの世界へ、晩夏から初秋という微妙な季節の動きが表現されています。自在置物とは甲冑職人の技術から派生した伝統的な金属工芸品。鉄や銅、合金を用いて昆虫や魚、鳥、甲殻類、龍など生物や架空の生き物を写実的に表現するだけでなく、胴体、脚部や触覚の節まで精緻につくり、実物のように動かせるのが特徴。テクノロジーと美が凝縮した工芸品は、ごく小さな存在にも関わらず、道行く人の視線を惹きつけます。
ミヤケさんがウィンドウの構成で留意しているのは、市中の山居として自然のもの、リアルを感じるものをウィンドウの中に必ず入れることだそう。ビルの谷間を歩きながらも「ふと足を停めた時に自然や季節を感じて欲しい」といい、「現代アートは大きなスケールのものを遠くから見ることが多いもの。そこに自然素材を用いた工芸的な要素を入れると、人々はテクスチャーや手作業の繊細さを凝視するために作品に近づきます。金の章では諸泉さん、満田さんの作品は共に俯瞰とクローズアップというように、ふたつの視点で五行の世界をより深く鑑賞できるよう意図しています」と続けました。

花椿通りから、アートを買える4階「THE TABLES」へ。
中央通りと花椿通りの4つのウィンドウを楽しんだら、ぜひ4階の「SHISEIDO THE TABLES」へ。エレベーターを降りたホール前のセレクトグッズショップに設けた、小さなギャラリーコーナーでは、ミヤケさん自身やディスプレー参加作家の作品を、テーマに合わせてセレクトし、展示販売しているのです。「4階のセレクトグッズショップでは、銀座からご自身の生活にアートやクラフトを持ち帰っていただけるよう、資生堂オリジナルでつくった上質なステーショナリーやファブリックなどを揃えています。1階のウィンドウの展示と連動した世界感で、作品を所有することで、アートがもっと身近になるのではと思いました」というミヤケさん。作家の世界観に触れてほしい、という思いが込められた一角では、現在諸泉さんの作品を2点展示販売しています。1階のウィンドウ越しでは体験できなかったアートの力を、4階で間近に感じてみてください。

アート・フーズ・ブックスをつなぐ、五行の世界
「参加作家の方々には、現代アートでは取り入れることが少ない季節感や五行の世界に挑戦していただいていると思います」というミヤケさん。ご自身も、1階のウィンドウディスプレーのアートから4階のショップで販売するアート作品とオリジナル小物の製作などを手がけながら、「THE TABLES」のフーズやブックスと連動している「五行」の大きな世界観をつくる作業を楽しんでいるそう。例えば、「金」の章に合わせて「結実」を想起させるぶどうを使った錦玉羹や本、秋の気配を感じさせるアートのストーリーを発見することは、いつもとは違う美意識の扉を開いてくれるに違いありません。アート・フーズ・ブックスまで五行のテーマでしつらえた、もうひとつの贅沢な空間「THE TABLES」は、おひとりおひとりの美への探究心を深めてくれるでしょう。