SHISEIDO WINDOW GALLERY<火>の章 2018

期間 : 2018年4月19日〜6月12日
場所 : SHISEIDO THE STORE

CREDITS
Art Direction / Artist : ミヤケマイ

撮影 : 繁田諭

--

作品解説(SHISEIDO THE TABLES)

「火」の章は端午の節句と街の風景とシンクロさせて
立夏を迎えるゴールデンウィーク前から「火」の章のディスプレイはスタートしました。端午の節供だけでなく、日枝神社山王祭のもっとも華やかな行事「神幸祭」で、銀座の中央通りを雅な王朝装束を身にまとった人々が練り歩くとあって、5月半ばになると各店は軒に提灯を下げ、お祭りを迎える準備をします。江戸時代から続く神幸祭と銀座の所縁を感じさせる提灯を、ミヤケさんはメインオブジェクトに用いて、ディスプレイと銀座の街の風景をつなぐことにしました。「丸型、長型、小田原型など、複数の産地から提灯を取り寄せました。火袋の和紙だけでなく、上下の化粧輪と受け底などのパーツもすべて白く着色し、無地でニュートラルな存在に。背後から光を当てて提灯の中のに火にちなんだモチーフが和紙に投影されるように仕立てました。筒型の小田原提灯はまわり燈籠のように回転させました」。
端午の節供にちなみ、鯉が滝登りして火を吹く龍になる故事にちなんだモチーフや、鳳凰、馬、マッチを持った童子などユーモラスなものも。また、提灯の受け底に鯉のぼりの吹き流しを思わせる5色に染めた紐を下げて飾りました。スポーツの祭典であるオリンピックの五輪の5色にちなみながらも、大人っぽいニュアンスの色に自ら染めたそう。幻想的な中にも、ミヤケさんらしいユーモアとセンスが織り込まれたコンテンポラリーな展示になりました。

日本美術のフォーマットを踏襲した花椿通りのお軸
花椿通りのふたつのウィンドウには、縦方向に配置した三幅対の掛け軸を展示しました。「地上」と「地下」の火のテーマで二双とし、お軸に描かれた火炎の中心を火で炙って穴を開け、火矢で貫いたかのように見せました。ミヤケさんは「火は暖炉の火のように心を落ち着ける働きがある一方、常に揺らいでいて動きがあるもの。安定しない状態とすべてを焼き払う火の強さを表しました。地下の火は3本の矢で業火、つまり地獄の火を表すので、書にも心の平穏がない状態を示す言葉を。対して地上の火は人の心に芽生える野心の火を表す言葉を選びました」とストーリーを説明しました。本紙上下の一文字には銀を焼いた「銀荒らし」を、木製の軸棒の軸先も焼くなど、お軸にも「火」を感じるディテールを散りばめています。
ちなみに三幅のお軸はそれぞれ濃紺、鼠色、松葉色など、男性の着物の伝統色を用いています。美を象徴する資生堂のディスプレイに武将的なイメージを取り入れたのは、男の子の節句であるのと同時に、現代女性の中にある男性性も表したかったから。ミヤケさんは常に時代性と季節感とを作品に反映しているのです。