SHISEIDO WINDOW GALLERY<木>の章 2018

期間 : 2018年1月19日〜3月13日
場所 : SHISEIDO THE STORE

CREDITS
Art Direction/Artist : ミヤケマイ

撮影 : 繁田諭

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作品解説(SHISEIDO THE TABLES)

「木」の章は、ミヤケさん自身による作品
今年1月からスタートした、現代美術家・ミヤケマイさんがアートディレクションを担当するウィンドウディスプレー。テーマは中国の古代哲学に基づく、自然の要素である木・火・土・金・水の「五行」です。ミヤケさんによると、第1回の作品のテーマに春を表す「木」を先取りしたのは、資生堂のシンボルマークが“椿”であること。また社名の由来である易経の一節“万物資生”という言葉が大地のめぐみへの畏敬を表し、化粧品に縁のある生薬にちなんでスタートは“木”がふさわしい、と考えたからだそうです。ミヤケさん自身が制作を手がけた木の章に続き、第2回は日本の春に欠かせない桜を五行のテーマにプラスしました。

巨大なボタニカルアートで構成する空中庭園
子どもの頃から押し花をつくるのが好きだったミヤケさんは、中央通りに面するウィンドウの作品として、押し花ならぬ“押し木”に挑戦しました。苦心しながら本物の木の幹や茎をスライスし、葉とともにアクリル板の上に美しくコラージュしてからもう1枚のアクリル板で挟み、パネルを浮遊させました。選ばれたのは椿はじめ、シダ、南天、ヤツデなど、縁起がよかったり、薬効のある常緑樹が中心。日本の女性の美しさを常に牽引してきた資生堂にふさわしい樹種を意識したそうです。中でもひときわ力強い存在が根引きの松でした。「門松をはじめ、神さまの依り代として象徴的な木が松です。初春にちなんで、めでたさと同時に、銀座の文化がこの地で脈々と栄えますように、という願いを込めました」と語ったミヤケさん。季節を少々先取りして「木」の章でスタートした背景には、古来から続く日本的な発想がありました。
学名と木の解説を書き添えた版画がつけられたパネルは、ダイナミックなボタニカルアートのよう。一方、離れてウィンドウを観ると複数のパネルで構成された空中庭園が浮かび上がります。マイクロスコープとテレスコープのように遠近両方で対象を見る「ドウェルフォーカス」の視点を特長とするミヤケさんの制作のアプローチがここでも生かされています。ちなみに夜になると南天の実やヤツデの花に見立てた素材が光って浮かび上がり、マジカルな表情を見せます。道行く人にリアルな植物とアーティフィシャルな美の二面性を印象づけました。

さまざまな樹木の丸太で家族のあり方を表現
花椿通りのウィンドウには、さまざまな木々の丸太を人に見立てて、現代の家族のあり方を表現しました。年の始め、人と人との結びつきの原点である家族を見つめ直すという意味も込めました、とミヤケさん。山桜とソメイヨシノの2本が象徴的な左のウィンドウは夫婦と子どもを。対して右のウィンドウは大きなプラタナスの丸太をシングルマザーに、小さな丸太を子どもたちに見立てて家族の多様なあり方を表現したそうです。洋服のように巻いた稲わらで編んだ菰は、冬になると大切な庭木や街路樹を虫から守るために菰を巻きつける、庭師の伝統的な技術を木のファッションとして応用しました。ところどころを三つ編みにしてフィッシャーマンズセーターを模しています。どちらのウィンドウにも小さな丸太を赤ちゃんに見立てて寝かせ、「SHISEIDO THE STORE」が誕生したシンボルメッセージとしました。