雨奇晴好

日舞の藤娘は、絵師の描いた大津絵が抜け出して踊り出すという趣向で、今回は踊りというテーマで5月から7月まで担当しました。5月と言えば鯉昇り、鯉と言えば登竜門のお話にちなんで厳しい滝を昇った鯉だけが出世して、龍になるというお目出度い話と、画竜点睛と言えば、竜の絵を描いた中国の絵描きが最後の仕上げの竜の目を描き忘れ、後であわてて目を描きいれると竜が 絵から抜け出て飛んで行ってしまう、という話を組み合わせました。寄り付き風にお道具に見立てたエルメスの商品が並ぶ左のウィンドウは床の間風になっていて、そこに掛かっている掛け軸(掛け軸の一文字、及び風帯には「川で生きるという」シリーズのエルメスのスカーフ)をあしらい黄河の流れを表現しています。(Vie du Fleuve 90cm Carre)の昇竜の絵からは龍が切り抜かれ蛇の抜け殻のようになってています。 左のウィンドウから抜け出た龍は右のウィンドウでは笛を吹くと踊る蛇の替わりに、晴れ渡った空に、笛にあわせて8の字(末広がり)又は永遠の文字(横8の 字)の形になって踊っています。丁度この季節は梅雨もあるので、雨、風を操る聖獣といえば龍ですし、海馬といえばタツノオトシゴ、エルメスのシンボルである馬とも龍は縁がありそうなので、龍を空の馬にみたてています。

期間 : 2007年5月17日〜7月14日
場所 : 銀座メゾンエルメス

撮影 : 馬場道浩/石原さくら