「猫になりたーい」と言う人の気持ちが理解できなかった。猫はお気楽でいいとか、
何やっても許されるからズルイとか、甘え上手でうらやましいとか、思ったことはな
かった。
そんなわたしが、「猫になるのも悪くないかも」と思った。ミヤケマイの描く猫
(ならべて見ると、「描」と「猫」って似てますね)の前に立ったとき、突然、ひら
めいたように、そう思った。
スーパーボールと戯れる猫。じっと虫を見つめる猫。ひたすら昼寝する猫……。ミヤ
ケマイの絵の中には、マイペースな猫の時間が流れている。彼女の描く世界に暮らす
猫たちは、自分たちのやりたいことに没頭し、誰にも邪魔させない。見るのは勝手だ
けど、下手な猫なで声なんか出さないわよ、とでも言いたげなオーラを放っている。
かわいいけど媚びない、愛嬌はあるけど飼いならされない。ある意味、本物の猫より
も猫らしいのかもしれない。ミヤケマイ本人にも通じるところがあるような気がする。
あたしはあたし、あたしの時間を生きてるの、と勝手気ままにやっているのに絵にな
るミヤケマイの猫たち。絵の中に向かって、「外の世界と一瞬取り替えっこしない?」
と言いたい気分にとらわれるが、わが道を行く猫たちは、わたしの言葉を聞く耳など
持たない。
最近、ミヤケマイのイラスト便箋を愛用している。そこには、お茶を立て、一服する
豚が住んでいる。それを見ながら、「猫もいいけど、豚も悪くないな」と浮気しつつ
あるが、ミヤケマイの豚もまた、振り向いてくれる気配はない。
今井雅子
いつかミヤケマイとお仕事したいと思っている脚本家・コピーライター。
脚本作品に映画『パコダテ 人』、
『風の絨毯』、テレビドラマ『彼女たちの獣医学入門』、
ラジオドラマ『雪だるまの詩』など。
最新の 仕事は日本冷凍食
品協会の冷凍食品ソング『冷凍マイナス18号』の作詞。